生存報告!

生きてます!!!!

社会人始まりまして2か月、Twitterとpixivで細々と活動しております。

pixivはラブライブ!(にこまき)限定での更新になっています。

よければこちらからどうぞ

遊瑠


追記から、この間にの字お姉さまに捧げたSS集から、律澪です。

久しぶりだなぁ・・・!どうぞ!!!
『あなたの名前を』  

「律」「澪」


さいころから、何度も呼び続けた名前。
どんな声でも、呼べば必ず返事があって。
すぐに駆けつけてくれた幼馴染。
そんな幼馴染が、友達だと思っていた幼馴染が。
ひどく真面目な顔をして、私を好きだとそう言った。


「澪のこと、ずっと好きだったんだ」


友達としてじゃなくて、本当の、好きなんだ。
普段の笑顔はなりを潜めて。
私を伏し目がちに見上げる表情、握りしめられた両の手。
そのすべてが、本気を物語っていた。

「今返事してって言わないから。考えて、返事して」


それだけを言うと、部屋を出ていった律に、なにも言えず、ただ閉まるドアの音を聞いた。


澪が好きだ。
友達としてじゃなく、一人の女の子として。
いつからだろう。
中学の入学式で制服を着た澪を見たとき、心が躍った。
なんてきれいなんだろう。そう思った。
中学生になった澪は、何人もの男子に告白されるようになって。
そのたび、あたしに相談してくるようになった。
相談を受けるたび、澪の気持ちを聞いて、安堵した。
少し自分有利なアドバイスをしたこともある。
高校が女子高で少し安心したのもつかの間、澪はファンクラブができたりクラスが離れたりと、あたしも不安になるようなことが増えた。
その気持ちに歯止めが利かなくなって、困らせたこともある。
澪が好きだ。
伝えてしまえばなんてことはない。
あたしは澪が好きで、この気持ちが変わることなんてないだろうから。
もし振られたとしてもずっと友達だぜーなんて笑える自信もある。
でも、やっぱり、願うなら、叶ってほしい。
そう願うことしか、いまのあたしにはできないんだけれど。

「律、ちょっと寄りたいところあるんだけど」

告白してからも、普段と変わらない態度の澪が、珍しく寄り道をしたいと言い出した。

「おーいいぞ。どこいく?」
「うん」

澪が前を歩く。

なんとなく並ぶのが憚られて、そっと後ろをついて歩いた。
澪の後ろ姿はきれいだと、思う。
伸びた背筋に、揺れる黒髪。
背中のベースも、澪の魅力を倍増させてる気がする。

「律?どうかしたか」

後ろを歩くあたしを不思議に思ったのか、澪が振り返る。
なんでもないよ、と返事をしようとして息が詰まった。
見返り美人
そんな言葉があるけれど。
その言葉は澪にこそふさわしい。そう思うほど、振り返った澪は美しかった。

「・・・いや、なんでもないよ」
「そうか。もう着くから」

また前を向いて歩き出す澪を慌てて追いかける。
十五分ほど歩いて、着いたのはいつもの公園。

「着いたぞ、律」
「言わなくてもわかってるよ」

すっかり日が暮れて、子どももいない公園の、指定席。
小さい頃は日が暮れるまでスティックでたたき続けたタイヤの遊具。
その一つにまたがると、澪も同じように向かい合って座る。

「セッション、やる?」
「うん」

鞄からスティックを出して構えると、澪もベースを肩にかけた。
それから一通りセッションをして、一時間ほどたったところで「だぁっ!」と両手を天につき出す。

「ったく。なんでドラムやってるときはそんなに集中力が続くんだろうな」

呆れたように笑う澪に、口をとがらせる。

「うるせーやい。澪こそ、ベース持ったら離さないくせに」
「なっ・・・律がやろうっていうからだぞ」
「へーあたしのせいですか」

軽口のやり取りをしながら、スティックを鞄にしまう。

「ジュース、買ってくる。ココアでいい?」
「あ、うん」

なんとなく、澪がこちらを見ない気がした。

「みーお」

手に持ったココアの缶を後ろから頬にあてる。

「わっ!なにすんだ律」
「てへへ〜手が滑っちゃった」

いつも通りげんこつが来るかと身構えても、頭には何もなくて。

「ったく」

そんなつぶやきと、プルタブを引く音。
なんか変だな。

「律は?何にしたの?」
「へ?あぁ、オレンジジュース」
「本当、好きだな」
「澪こそ、いつもココアじゃん」
「そだな」

澪の隣に座って、プルタブを起こす。

プシュ

小さな音のはずなのに、人のいない公園に響いたその音に、少し不安になって。
そっと、手を伸ばして。
ちゃんと隣にいるか確認した。

「・・・なに?」
「なんでも、ない」
「変な律」

ふふふと笑って缶を傾ける澪は、いつもの澪で。

「あたし、変かなー」

「さぁな」

会話が途切れた瞬間、あたしの手から缶が滑り落ちた。


「「あ」」


パシャッ・・・

一口飲んだだけで、ほとんど残っていた缶の中身が、地面にじわじわと広がる。

「あーあ。もったいない」
「うるせー!あたしが一番思ってるわ!」
「なぁ、律」

缶を拾おうとかがんだところで、呼ばれた。

「んー?」

拾い上げた缶を近くのゴミ箱にシュートする。
カラン、ナイスシュー。
そこまで頭で再生したところで振り向いた。
振り向いた先にあったのは、予想外の澪の顔で。

「な、なんで泣いてるんだよ澪」

慌てて澪の頭を抱き寄せる。

「だって、私、わたし、ずっと律の気持ち、気づかなくて、」
「いいんだよ、そんなこと」



澪があたしの隣にいてくれるだけで。
あたしが澪の隣にいられるだけで。




「それだけであたしは幸せなんだ」

だから、泣かないで。
そう囁くと、澪は鼻をすすって。

「律だけ幸せになってどうするんだよ」
「へ?」

思ってもいない返事に、思わず澪の顔を覗き込む。



「私も、幸せにしてよ。律」




それは、紛れもない返事で。


「それって、さ。こないだの」
「好きだよ、律」


追い打ちのように告げられた言葉に、次はあたしの目から涙がこぼれた。